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あけましておめでとうございます

──城の中庭にて──

フィア   「というわけで、新春! 特別お茶会を開きまーす! ぱんぱかぱーん!」
エドアルド 「なにこの適当な企画」
レヴィン  「忙しいさなかに人を呼びつけておいて、これですか? ふざけないでください、帰らせていただきます」
フィア   「あっ、レヴィンさん待って待って、帰らないでー! 今帰ったら……『レギュラーから外しますよ!』」
レヴィン  「(ピクッ)」
フィア   「あっ、戻ってきた。通りすがりの人にもらったこのおまじない呪文、効果あるなぁ♪」
エドアルド 「知らない人から勝手に物もらうの、やめたほうがいいよ」
フィア   「あれ、エドアルドさん、頭に変なわっかがついてますよ。どうしたの?」
エドアルド 「ほっといてくれ。僕は俗世には嫌気が差したんだ」
フィア   「邪魔そうだから、取ってあげますネ」
エドアルド 「や、やめろ! これはこれで気に入ってるんだ!」
レヴィン  「ちょっと! 茶会って、まさかこの三人だけですか?」
フィア   「ええ、他の人は遅れてるみたいで。せっかくお菓子も用意したのに……」
レヴィン  「しけた菓子なんかいいから、さっさと茶を出しなさい、茶を!」
フィア   「あっ、す、すみません、気がつかなくて。すぐに持ってきます!(アタフタ)」
レヴィン  「フン。まずいのは飲みませんからねわたしは」
フィア   「え? じゃあ、レヴィンさん淹れて来て下さい。どうかお願いします」
レヴィン  「殊勝な顔で図々しく頼むのはやめていただけませんか? シスター・フィア」

──ヴィクター到着──

ヴィクター 「……なんだこのけったいな集まりは?(不審) 人の城で勝手に」
レヴィン  「はっ、ヴィクターさま! お待ちしておりました、どうぞこちらへ。今お茶を淹れて参りますから!」
エドアルド 「きっ、貴様、国王。何しに来た! 帰れ!」
レヴィン  「この無礼者! 人の主君に向かってなんたる口の利きかただ。斬って捨ててくれる!」
エドアルド 「ふん。パワーアップした僕を捕まえることができるかな? ……天使モード・飛翔!」
レヴィン  「げ、飛んだΣ」
エドアルド 「さあさあ、捕まえてごらんよ。無理だろうけどね!」
レヴィン  「だっ、誰か網を持て! 網をー!」
エドアルド 「ほらほら、捕まえてみろってば!」
レヴィン  「くっ……ちょこまかと目障りな! 捕まえて引き摺り下ろしてくれる!」
エドアルド 「アハハッ」
レヴィン  「待てー!」
エドアルド 「アハハハッ、捕まえてごらんよ!」
ヴィクター 「なんだこいつら……」

──ノイエ到着──

ノイエ   「何か、妙な光景が目の前に。わたしの目がおかしいのだろうか?(p_-;)」
フィア   「あっ、ノイエさんいらっしゃーい。今お茶いれますか──Σキャアアア!」
ノイエ   「フィアさま危ない!(ダッシュ)」
フィア   「ああ、ノイエさんありがとう! お湯ひっくりかえして火傷するとこでした(震)」
ノイエ   「どういたしまして。お怪我がなくて何よりで──」
ヴィクター 「フィア、何してるんだおまえは? 相変わらずどんくさいな(呆)」
フィア   「はっ、ヴィクターさん。こんなところを見られてしまうなんて恥ずかしいです(照)」
ヴィクター 「照れるな気持ち悪いっ。おまえの失敗なぞ見慣れとるわ!」
フィア   「実は、さっきもここに来る途中で高そうな壷を割ってしまって。ううっ」
ヴィクター 「泣くな。働いて弁償しろ」
フィア   「またわたしに下働きをしろって言うんですか? はいっ喜んでーっ!」
ヴィクター 「喜ぶな! そこは泣くところだッ!!(青ざめ)」
ノイエ   「なぜだろう。助けたのはわたしなのに、存在感が薄い……(-ー;)」

──アラリス・ガーラント到着──

ガーラント 「おうおう、やってるな。新年の茶会」
アラリス  「茶会だったんですか、これ。知らなかったから軽装で来てしまった」
ガーラント 「なんだアラリス。ヒラヒラでピンクのドレスでも着たかったのか?」
アラリス  「ち、違! わたしは一族の戦士です、そんなものは着ません!」
ガーラント 「とか言って、本当は好きなくせに。ヒラヒラピンクが」
アラリス  「勝手に決めつけないでくれませんか、ガーラント!!」
ノイエ   「……お久しぶりです。ガーラント卿(意気消沈)」
ガーラント 「おう、久しぶりだな、ノイエ。元気でやってたか……って、沈んでるな(苦笑)」
ノイエ   「ええ、最近いろいろうまくいかなくて……」
ガーラント 「しかしあれだなー。昔はおまえと一緒にやってたのに、最近はとんと会えないな」
ノイエ   「あなたの設定はかなり変わりましたからね。前はあなたが親衛隊長で、わたしが副隊長という役どころでしたから、一緒にやれて楽しかったですね」
ガーラント 「おいおいノイエ、『セッテイ』なんつー小難しい言葉を使うんじゃねえよ。意味がわからん」
ノイエ   「世の中には、分からないほうが幸せなことも……(遠い目)」

アラリス  「なんの話? ふたりとも」
ノイエ   「おや、あなたはたしか、厨房で皿洗いをしている暗殺者の女性」
アラリス  「皿洗いは仮の姿……って、誰が皿洗いで暗殺者だ! 『護衛だ』と言っただろうっ」
ノイエ   「そうですか。まあ、表立って『暗殺者だ』とは言いづらいでしょうから、何も言いません」
アラリス  「違うと言っている! 腹の立つ男だな」
ノイエ   「あとでわたしが厳選した『暗殺スポット』をご紹介しましょう。これでも城内の警備には詳しいんです(クス)」
アラリス  「き、貴様、あいつを殺す気か!?(驚愕)」
ノイエ   「いえまさかそんな。……ああ、お勧めの『暗殺タイム』もお教えしましょうか? 狙い目は謁見の……」
ガーラント 「ノイエ、後ろに立ってるぞ~」
ノイエ   「え、誰がですか?(振り向く)」
ヴィクター 「……こんな隅で何やら楽しそうな話をしてるじゃないか。ノイエ?」
ノイエ   「ああ、陛下。もちろん冗談ですよ、本気になどなさらないでしょう?」
ヴィクター 「無論だ。忠実な家臣を疑うほど、俺は疑い深くはない(微笑)」
ノイエ   「そうですよね。陛下のお心はそんなに狭くないはずです(微笑)」

フィア   「ノイエさーん、ヴィクターさーん! 席の準備ができましたよ~!」

ヴィクター 「……一時休戦にしてやろう、ノイエ」
ノイエ   「ありがたき幸せ(一礼)」
ヴィクター 「続きは、あいつお手製のまずい菓子を食ってからだ」
ノイエ   「フィアさまお手製の。それは楽しみですね」
ヴィクター 「このあいだは、中から変な異物が出てきて吐きかけた」
ノイエ   「なっ」
ヴィクター 「紙クズだった……」
ノイエ   「な、なぜ紙クズが? いやたまたま混入してしまったのでしょう。よくあることです!」
ヴィクター 「いや、自分で入れたらしい」
ノイエ   「なぜ……?」
ヴィクター 「東方から来た商人に教えてもらった作り方なんだそうだ。幸運のクッキーとかいうらしいが」
ノイエ   「そういえば聞いたことが。たしか、占いが書いてあるのだとか?」
ヴィクター 「中は無地だった。以来、俺はあのクッキーを『不運のクッキー』と呼ぶことにしている。出ないことを祈るしかない」
ノイエ   「しかし、なぜ無地だったのだろう」
ヴィクター 「字が書けないからだろ」
ノイエ   「なるほど……(納得)」

フィア   「それでは、新年の挨拶を、えーと……誰にしようかな」
レヴィン  「考えなくても決まっているでしょう」
フィア   「えっ、じゃあ、レヴィンさんお願いします。良かったあ、立候補してくれる人がいて(安堵)」
レヴィン  「……シスター・フィア、あなたはわたしを怒らせたいようですね(怒)」
エドアルド 「挨拶くらいちゃっちゃとできるだろ。やってやればいいのに(頬杖)」
レヴィン  「じゃああなたがすればいい!(怒)」
エドアルド 「チッ、仕方ないな……」
レヴィン  「まんざらでもない!?」
エドアルド 「ええ、それでは、新年の挨拶をさせていただきます。今年も神の祝福に包まれ、つつがなく……」
ノイエ   「かわいそうに。もう出番がないのに挨拶をさせられるなんて(ため息)」
ヴィクター 「そのわりには嬉しそうじゃないか。エドアルドのやつ」
ノイエ   「あの調子で今後も出てこられたら、そのうちフィアさまを取られますよ。陛下」
ヴィクター 「あいつを俺の目の前から消してくれるやつがいたら、褒美をやってもいい」
ノイエ   「では、『騎士と乙女』の『騎士』のポジションはわたしがいただいてもいいんですね」
ヴィクター 「おまえとフィアの物語? ……フッ、興味ない(薄笑)」
ノイエ   「(唐突に振り向き)アラリス嬢、この『完全暗殺マニュアル』をお持ち下さい(怒)」
アラリス  「だからいらんっつっとるだろうが!!」
エドアルド 「──として、挨拶に代えさせていただきます」
フィア   「わあ、素晴らしい挨拶をありがとうございます、エドアルドさん! これで今年もバッチリですね!(拍手)」
エドアルド 「フフ。来年も、僕に声をかけたかったらかけてもいいよ」
レヴィン  「さっさと成仏すればいいのに(ボソ)」


〔終わり〕





というわけで、皆様、今年も宜しくお願いいたします。(u_u*)

2007年 新春
La*ile管理人 りら拝
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2007 / 01 / 03. Posted in おまけ小話1 [編集]

100万HITの時に出すはずだったオマケ話...1

王都の街外れに、とても小さな一軒家があります。
夜に煌々と灯りをともしても、外から見れば星の光にかきけされてしまうような小さな家です。けれどもそこに住む兄と妹は、貧しいながらも助け合い、ささやかな幸せを大切にして暮らしていました。
そんなある日……。

高台にあるお城では、連日連夜、月の光も霞むような眩しさで、煌びやかな宴が繰り広げられておりました。なんでも、若い王さまが、お妃選びのために宴を催しているのだそう。
とはいえ、その日の食事にも困るような暮らしをしている貧しい家の兄妹には、そのようなことは関係ない──はずでしたが、妹のほうは、ずいぶんとがたのきた木枠の窓からそのお城を見上げ、なにやら切なげにため息をついています。両の手で頬杖をつくその横顔は悲しげなほどで、兄は、滅多にそんな顔をしない妹の、いつもと違う様子にすっかり困惑してしまいました。

*

兄 「……ずいぶんと憂いげなお顔をしていますね。どうしたのです?」
妹 「兄さん。……いいえ、なんでもないんです。ただ、ちょっと……」
兄 「ちょっと?」
妹 「お城がずいぶんと賑やかそうで。きっと、楽しいんだろうなあ、と思って」
兄 「まさかとは思いますが……お城の宴に行きたいのですか? フィアさま?」
妹 「う、ううん! そんなこと思ってないけど……。想像してみてるだけ。おかずがないときに、おいしそうなソースのにおいを思い出してパンを食べるのとおんなじことよ。本当に食べられるなんて思ってない」

あわてて手を振って打ち消す妹に、兄はいつになく厳しい顔をしました。

兄 「想像するだけでも、感心しませんね……。あのお城で毎晩開かれている宴は、それはもう自堕落なもので、あなたのように善良に暮らしている娘にはまったく相応しくないものです。憧れる気持ちは分かりますが、早く窓にカーテンを閉めて、すっかり忘れておしまいなさい」
妹 「は、はい、ノイエ兄さん……。ごめんなさい」
兄 「あそこの王さまは悪事ばかり働いているという、評判の悪い王さまです。そんな人のお妃になったら、この先どんな苦労をするか分かりませんよ」
妹 「わ、分かってます! わたし、別にお妃になりたいわけじゃないもの。ただ、その……きっと、すごくおいしそうな食事が出てるんだろうなあと思って……」
兄 「そんなにおいしそうな食事に憧れていたのですか……。わたしは、この暮らしはこれはこれで、新鮮だと思って楽しんでいたのですが……。あんな小さなパンを二人で分け合うなんて、初めての体験でしたし。てっきりあなたも楽しんでいるのだと。気が利かなくてすみません」
妹 「べ、別に今の暮らしに不満なんてないわ! 変なこと言ってごめんなさい。すぐにカーテンを閉めます」
兄 「いえ、わたしがいけないのです。すぐに実家に仕送りを頼みますから、少し待っていてください。ついでに家を増築しましょう。床を大理石にするのは、冬が寒いのであまり気乗りがしなかったのですが……あなたをお城にやるよりはマシです」
妹 「兄さん、何を言ってるのか分からないわ……」


どうやら、妹はお城の宴に行きたい様子。
しかし兄のほうは、頑なにそれを許そうとはしません。
そんなこんなで、その日は何ごともなく朝を迎えました。

──次の日。

フィア 「わあ、今日も気持ちのいい朝! 洗濯物がいっぱい乾きそうだわ」
カレフ 「……やあ、フィアちゃん。今日も洗濯をしているの? 働き者だね」

そこへ、ずいぶんと汚れた旅装で現れたのは、隣の家にすむ男でした。

フィア 「あっ、隣の家のカレフさん! 旅からお帰りになっていらしたんですね」
カレフ 「うん……。北のほうに、修行が厳しくて有名な修道院があるから、一ヶ月ほどそこにいたんだ。評判どおり厳しくて、食事は三日に一度だったけど、僕としては少し物足りなかったかな……。まだ煩悩を捨て切れなかったよ」
フィア 「そういえば、カレフさん、ずいぶん痩せて見えるわ。今日はうちに来て、ご飯を食べていって。お土産話をききたいし……それに、そのままじゃ倒れてしまうわ」
カレフ 「それはありがたいけど、食べ物のお土産がなくてすまないね。君は土産話より、食べ物のお土産が好きなのに」
フィア 「えっ、どうして知ってるんですか?」
カレフ 「まあ……隣人のよしみだよ」
フィア 「そっか。でも、本当に来てくださいね! ノイエ兄さんも、カレフさんがずいぶん家を留守にしているから、心配していたみたいですよ。『ドアにまで蜘蛛の巣が張ってるけど、中で死んでるんじゃないだろうか』って」
カレフ 「それはどうも。心配をかけたようだね」
フィア 「わたしも心配だったわ。だから何回もドアを開けて中を見ようとしたんだけど、その蜘蛛が、その……黄色と黒のだんだらのやつで、毒があるかもしれないと思って、怖くて開けられなかったの」
カレフ 「無理をすることは無い。どうせこのまま、家のドアも開けずに次の旅に出ようと思ってたところなんだ。ただ、ちょっと君の顔を見てみたくなってね」
フィア 「えっ、また旅に出るの? そんな……駄目よ! 一日くらい体を休ませないと、本当に倒れてしまうわ。……あっ、そうだ! うちに泊まっていってよ、カレフさん。ご飯を食べて、お風呂に入って、ゆっくり寝て、それから旅に出ればいいじゃない」
カレフ 「お風呂か……」
フィア 「べ、別にくさいとは言ってないわ! でも、服も洗濯したほうがいいし……」
カレフ 「たしかにそうだね。それじゃ、申しわけないけど一晩ご厄介になるよ。蜘蛛の巣の張ったドアを開けるのは少々気が滅入るし」


そうして、隣人は妹の家へ邪魔することになりました。


フィア 「古いけど、あんまり散らかってないの。きれいでしょ?」
カレフ 「そうだね。君が片付けてるの?」
フィア 「ううん、ノイエ兄さんが。そこのパッチワークのベッドカバーも、兄さんの手作りなの。兄さん、手先が器用だから刺繍もすごく得意で、わたしの名前入りのハンカチを作ってくれたのよ。とっても素敵なの」
カレフ 「彼はこの生活を満喫してるようだね……」
フィア 「あっ、そこ、床が抜けそうだから気をつけてね」
カレフ 「分かってるよ。だから、またごうとしてるとこなん……ああ」
フィア 「大丈夫!?」
カレフ 「大丈夫だ。たぶんね……落ちただけだ。あと、板が刺さっただけ」
フィア 「血が出てるわ。手当てしなきゃ。……ごめんなさい。言うのが間に合わなかったけど、周りも腐ってるの」
カレフ 「いや、平気だ。大げさなことにしないでくれ。それにしても……僕が思った以上に広範囲に腐っていたよ……。こんな危険な家に君を住まわせるなんて、君の兄さんはひどいな」
フィア 「兄さんは、家を増築するといって、今日は朝から出かけてるわ」
カレフ 「増築?」
フィア 「うん。お城みたいにするんだって言ってた」
カレフ 「この、ぼろい家をかい?」
フィア 「無理だと思うけど……兄さんは、後先考えずにやっちゃうところがあるから。わたし、何も言わずに、兄さんの好きにさせてあげようと思ってるの」
カレフ 「……困った人だね。でも、どうしてお城みたいにしたいのかな」
フィア 「それは、その……わたしが昨日、お城を見上げてたからだと思うわ。お城に住みたいんだと勘違いしたみたいなの。『家を城のようにすれば問題は解決するはずだ』って呟いてた」
カレフ 「えっ。……お城に住みたいのかい? フィアちゃん?」
フィア 「ち、違うわ! ただ、毎日華やかなダンスパーティが開かれているんだって……。わたし、ダンスしたことがないし、パーティのご馳走も食べたことがないから」
カレフ 「そういえば、噂は耳にしたよ。王さまがお妃選びをしてらっしゃるんだってね」
フィア 「うん。……それでね。反対隣のスティーナさんと、セラエさんは、もう行ったらしいの。お城から招待状が来たのよ。……来たっていうか、スティーナさんがお城で働いているから、その関係で、余ってるのをたくさん貰えたんだって。もう四回も行ったって言ってた。わたし、いいなぁ、と思って……」
カレフ 「そんなに山ほど招待状が余ってるなら、一枚くれと言ってみたら?」
フィア 「う、うん……。でも、ノイエ兄さんが絶対反対するから」
カレフ 「ああ……。そうだろうね」
フィア 「スティーナさんも、それを気にしてるみたい。『一緒に行きたいけど、あなたのお兄さんの手前……』とかなんとか、もごもご言っていたもの。だから、『ください』って言えなくて……」
カレフ 「それは残念だね。招待状のツテはあるのに、行けないなんて」
フィア 「そうなの……。それで、ため息をついてお城を見上げてたら、兄さんがいろいろ気にして……」
カレフ 「君が、王さまのお妃になりたがってると勘違いしたんじゃないかな。それで慌てて増築しようとしてるんだと思うよ」
フィア 「そんなこと、あるわけないわ! 王さまなんて、顔も見たことがないし……わたし、顔も知らない人と結婚したりしないわ。それに、ノイエ兄さんを一人にはできないもの」
カレフ 「そうだね」
フィア 「うん」
カレフ 「でも、王さまは、もう何ヶ月もお妃探しをしているけど、気に入る娘が一人もいないという話じゃないか」
フィア 「気難しいのね……王さまって。おじいさんになる前に、誰かひとりに決めればいいのに。……ともかく、王さまのことなんてどうでもいいの。それよりわたしは、毎晩出されるごちそうが、もし残ったりしたら勿体ないと思って……」
カレフ 「勿体ないというか、食べたいだけだろう?」
フィア 「うん……」
カレフ 「素直だね……」
フィア 「だって、毎日、兄さんとパンを半分こしてるんだもの。正直なところ、寝る前にはおなかがぺこぺこになるの。でも兄さんは小食みたいで、全然平気そうだから、わたしだけ『おなかが減った』って言えなくて」
カレフ 「……それは聞き捨てならない話だね。君のところのノイエ兄さんは、昼はたらふく食べているはずだから、夜は少しでも平気なんだろうけど。一日中家にいる君のことも考えてほしいものだ」
フィア 「え? ノイエ兄さんが、昼はたらふく食べてるって……どういうこと?」
カレフ 「まあ、それはいいから……。とにかく僕なりに、君の力になれないか考えてみるとするよ。フィアちゃん。ノイエ兄さんは、君のことを考えてないわけじゃないだろうけど、どうも自分の楽しみが優先されているような気がしてならない。もしそうだとすると、それは預けた僕の責任でもあるから……」
フィア 「えっ、兄さんに何か預けたの? もし持って帰るんなら、わたし、探しましょうか?」
カレフ 「いや、なんでもない。独り言だよ」
フィア 「カレフさん、独り言なら心の中だけで喋ってくれない? わたし、自分に話しかけられているんだと思ってしまうんだもの」
カレフ 「ごめんよ。それより、今晩の食事はなんだろう? 楽しみだな」
フィア 「近くに生えていた草を、もらい物のフルーツで煮込んでみたの」
カレフ 「……そう。とてもおいしそうだね。(微笑)」


その頃、城。


ノイエ 「(心の声・あのひなびた家、フィアさまが「気に入った」というから契約したが、本当は気に入らなかったのだろうか……。それならそうと、もっと早く言ってくだされば良かったのに。)」
国王 「考えごとか? 伯爵」
ノイエ 「あ、ああ……陛下。申し訳ありません。食事の席で考えごとなど」
国王 「まったく、無礼な話だ。詫びる気持ちがあるのなら、何を悩んでいたのか素直に喋ることだな。ちょうど、これ以上食がすすむ料理もテーブルにはないことだ。そなたの話を酒のつまみとするとしよう」
内務卿 「それは面白い。ほれ、ノイエ卿、遠慮などせず話してみるがいい」
ノイエ 「できればご遠慮申し上げたいが、許してはいただけないようで。……それなら言いますが、実は、家を増築しようと思っているのです。どんなふうにするか、頭を悩ませているというわけで」
国王 「聞いてみたら案外つまらぬ悩みだったな」
内務卿 「ノイエ卿、陛下が退屈なさっておいでだ。もう少し脚色せぬか!」
ノイエ 「退屈してくださって結構。……そもそも、こう毎日毎日昼食の席に呼ばれては、わたしの胃もどうにかなってしまうというものです。明日からは、しばらく辞退させていただきたいですね。自宅でパンとスープだけの質素な食事をとるほうが、わたしにとってはよほど幸せなことですので」
レヴィン 「おやおや……黙って聞いていれば。それならあなたは明日から来なくて結構ですよ、ノイエ卿。好きなだけ水っぽいスープをすすっていればよろしい」
ノイエ 「失礼な。水っぽいとは何ごとです。一応味はついているのですよ! どうせあなたには分からぬことだろうが」
レヴィン 「ところがどっこい、味見をしたことがある」
ノイエ 「どこで!?」
レヴィン「陛下」
国王 「なんだ、執務補佐官」
レヴィン 「聞くところによると、このノイエ卿は、最近王都の街なかのぼろ家を買い、そこで愛人と暮らしているという話です。……と言いますか、わたしは自分の目でそれを目撃いたしました」
近衛騎士団副団長 「味をみたのはスープですかな? それとも、愛人のほう?」
レヴィン 「むろんスープです、ちょっと黙っていていただけますか、メルヴィン卿」
近衛騎士団副団長 「(しまった、というように舌を出す)」
内務卿 「……愛人! なんと、そのような面白い話があったとは。なぜ早く話さんのだ、ノイエ卿」
ノイエ 「あ、愛人ですって? まったく、なんというひどいことを仰るのだ。根拠の無い誹謗中傷だ!」
レヴィン 「根拠はある。わたしが自分の目で見たと言ったではないか」
ノイエ 「それなら立派な家宅侵入罪ですよ! もう言い逃れはできません」
レヴィン 「……窓の外から見たのだ。敷地内には入っていない」
ノイエ 「嘘を仰い! 今、目が泳いだのを見逃すとお思いですか。──陛下! あなたの執務補佐官が、わたしに無礼な発言を。そのうえ、敷地のまわりをうろつき、わたしの私生活を脅かしました。とうてい許せるものではありません。なにとぞ、この場でご沙汰を!」
国王 「ここは法廷じゃない。好きに言い合え」
ノイエ 「陛下!」
国王 「しかしノイエ、その愛人というのはどういう娘なのだ。興味がある」
ノイエ 「な……何をお戯れを。陛下のお目にかなうような娘ではございません」
国王 「そう謙遜するな。おまえが気に入るというのはよほどだろう」
ノイエ 「謙遜ではなく嫌がっているのです。どうぞお察しください、英明な我が主君とあらば」
国王 「嫌味かそれは?」
レヴィン 「ノイエ卿、陛下に対して無礼がすぎよう。命令されれば、愛人といえど、一も二もなく差し出せばよいのだ」
国王 「そこまでは言ってない」
ノイエ 「たとえ陛下のご命令とあっても、こればかりは譲れません。愛人などではなく、人からお預かりしている大切な娘さんです。何かあっては一大事」
国王 「何もないから心配はいらぬ」
ノイエ 「今年は雨が降らない、というような話を信じろとでも?」
国王 「そこまで信用がないとはな……」
ノイエ 「失礼ですが、このあたりで退席させていただきます。どうやら、わたしも少し酔いました」
レヴィン 「一滴も飲んでいないのに酔うとは、不思議なことですねえ」
ノイエ 「悪酔いしたのですよ、あなたがたのお話にね!」


ノイエ退席後。


国王 「見たか、あいつのあの慌てようを」
近衛騎士団副団長 「陛下もお人が悪いですなあ。真面目なお方をあんなにからかって」
国王 「おまえも一緒になってからかっていたではないか」
内務卿 「さよう、さよう。メルヴィン卿の言うとおり。ノイエ卿はいささか生真面目すぎる。あれくらいからかったほうが面白い」
近衛騎士団副団長 「それにしても、愛人とは……。真面目な方だと思っていたら、案外ちゃっかりしておられる。そのような娘を囲っているとは」
国王の従兄 「みなさん、悪ふざけがすぎますぞ。ノイエ卿は気分を害されたでしょう」
内務卿 「まあまあ。たまには良いではないか。堅苦しいことを申すでない」
国王 「我が従兄の言うとおりだ。そろそろお開きにするとしよう。執務に戻らねば」
内務卿 「それは残念な。しかし、また明日。当然わたしも呼んでいただけるでしょうから」
国王 「そろそろそなたの顔も見飽きたな。明日は軍務卿を呼ぶとしようか」
内務卿 「そんな、殺生な!」
国王 「はは、冗談だ。そう面白い顔をするな……またからかいたくなるではないか」


執務室。
長い金髪を束ねた男が、美しい礼服を着、絨毯の上を歩き回っている。
窓からは夕日の光が差し込み、部屋の中をオレンジ色に染めている。

レヴィン 「(ふむ……。ノイエの家にいる、あの娘……。陛下が珍しく興味を示されたということは、使えるかもしれぬ。陛下は『もう妃探しを打ち切りにする。飽きた』と仰っておられたが、せめてあと一度、舞踏会を開くことができたら!)」
国王 「何をうろうろと歩き回っている? 執務補佐官。早く俺の仕事を片付けよ」
レヴィン 「ええ、陛下……それは宜しいですが、引き換えに条件が」
国王 「主君に対して条件が出せると思っているのか? このコンコンチキめ」
レヴィン 「…………ゴホン。先日、陛下は、もう舞踏会には出ないと仰っておいででしたが?」
国王 「言ったな」
レヴィン 「誰か意中の娘でも?」
国王 「そんなものはいない」
レヴィン 「では……?」
国王 「いいか、執務補佐官? 俺がいったい何人の女とダンスを踊ったと思っている?」
レヴィン 「まだ三千四百五十六人でございます、陛下」
国王 「十分だ!」
レヴィン 「王都にはまだ何百人も娘が……」
国王 「国中の女とダンスを踊れとでもいうつもりか。もうたくさんだ」
レヴィン 「では、次の舞踏会で最後にいたしましょう。あなたの望みどおり」
国王 「俺の望みは、二度と舞踏会に出ずにすむことだ。次などない」
レヴィン 「……ああ、そうそう……」
国王 「なんだ、急にもったいぶって」
レヴィン 「次の舞踏会には、この国一の美女がやってくるそうですよ」
国王 「その美人に恥をかかせたくないなら、舞踏会に来るなと言っておけ。いいな?」
レヴィン 「ついでに、陛下が会いたがっていた女……」
国王 「……なに」
レヴィン 「彼女にも招待状を出しておきました。きっと来るでしょう」
国王 「……本当か?」
レヴィン 「ええ、もちろん(微笑) わたしは嘘などつきません」
国王 「しかし、どうやって分かった? 俺は相手の顔を覚えていないぞ。暗かったから……」
レヴィン 「そこはそれ、わたしの情報網で」
国王 「………」
レヴィン 「そんなにうさんくさそうな目で見ないでください。ともかく、あなたがいつぞやの夜、出会い、いろいろと『忘れられない経験をした』という娘を、わたしは必ずや次の舞踏会に連れていきますから。楽しみにしていてください、陛下」
国王 「……期待せずに待っているとしよう」


*


執務室に入ってきたヴィクターは、その日、見慣れない書類が窓際の床に散らかっているのに気がついた。風で飛んだのだろうと思いながら拾いに行き、ふと書類の内容に目を落とすと、たちまちその目が点になった。
「『何をうろうろと歩き回っている? 執務補佐官。早く俺の仕事を片付けよ』……なんだこれは?」
面食らって思わず周りを見回したが、誰もいない。
ヴィクターは再び書類に目を落とした。自分でも知らないうちに声を出してしまう。
「レヴィン、『ええ陛下、それは宜しいですが、引き換えに条件が』。国王、『主君に対して条件が出せると思っているのか? このコンコンチキめ』……」
ヴィクターは信じられないというようにまた目をみはったあと、急にいまいましげに書類を手のひらに叩き付けた。
「くそっ……レヴィンのやつ! 真面目に仕事してるのかと思ったら、執務室でこんな下らん小話なんぞを書きやがって。減給してやる! 絶対だ!」
小説の中に書かれている自分の姿があまりにもひどいことに腹が立ったのだとは、分かっていてもなかなか認められないヴィクターだった。それにしても奇妙に思うほど字がつたないので、これが、嫌味なほど流麗な字を書くあの側近の作だとは、正直思えないのであったが……。


続く
2010 / 01 / 30. Posted in おまけ小話1 [編集]

100万HITの時に出すはずだったオマケ話...2

レヴィン 「(陛下がいつぞや『忘れられない体験をした』という娘だが、どんな体験だったのか陛下は教えてくださらない。しかし、きっと良い思いをしたのだろう。山中の暗闇で若い女と出会うなど、滅多にないことだろうからな……。)」

彼は若い王を早く結婚させるため、五十回目の舞踏会を開こうと画策していた。しかし王はすでに三千四百五十六人の女とダンスを踊っており、ダンスにもお妃選びにもうんざりしている。ここは奇抜な策を弄しなければならない……。

レヴィン 「(陛下が興味を示した、ノイエの愛人の娘……。あの娘を使うのだ。実はあの娘が、陛下が山中で出会った若い娘だったということにすればいい! どうせ暗くて顔を覚えていないというのだから、分かるものか。ついでにノイエにも嫌がらせが出来て一石二鳥だ。)」

レヴィンは心を決めると、ノイエへの嫌がらせと、主君への嫌がらせを二つ同時に行うという大胆な行動に出た。彼は好きなものに対して嫌がらせをしたくなるという悪い癖があるのだ。

*

フィア 「カレフさん、どこに行ったのかしら? 朝ごはんを作ったのに……」

ノイエ 「いや、そこは古代風の噴水を設置するところだ! 水獣の置物はもう少し右にしてくれ。それと、噴水までのアプローチはどうなっている? 舗装技師には石畳ではなく砂利にしてくれと言ったはずだが」

フィア 「ノイエ兄さんは、よくわからない庭造りで夢中だし……。それにしても、いきなり裏の空き地を買ったりして大丈夫なのかしら。うちにそんな余分なお金があるとは思えないけど。だって、パンだって半分こして食べていたんだから……」

カレフ 「やあ、フィアちゃん。こんにちは」
フィア 「あっ、カレフさん! おかえりなさい! どこ行ってたの?」
カレフ 「きみ、舞踏会に行きたがっていただろう? それでさっき、城に行ってみたんだ。そうしたら“第五十回・舞踏会実行委員会”と看板が出ていたんで、ぶらりと寄ってみたら、きれいな顔をした長い金髪の男が招待状を十枚ほどくれたんだよ。今王都で話題の歌姫の歌と豪華な夕食つきで、招待状一枚につき一人まで入場無料らしいんだ」
フィア 「ええっ! カレフさん、招待状を手に入れられたの!?」
カレフ 「うん。だからこれ、きみにあげるよ」
フィア 「嬉しい! でも、一枚でいいわ。ほかのはほかの人にあげて」
カレフ 「そうだね。普段からお世話になってるご近所に配るとしよう」
フィア 「これで憧れのごちそうが食べられるんだわ……。きっと果物が山盛りになったケーキや、あつあつのパイがあるに違いないわ!」
カレフ 「歌とダンスのほうはどうでもいいのかい? フィアちゃん」
フィア 「わたし、歌はそんなに興味ないし、ダンスはできないもの」
カレフ 「そうか。まあ、僕も一枚貰って行くとしようかな。歌姫の歌に少し興味がある。ほんの少しだけね」
フィア 「そうよ、一緒に行きましょう! ……あっ、ノイエ兄さんにも一枚あげていい?」
カレフ 「きみの兄さんはいつでも城に入れると思うけど……。まあ、いいよ。あげてみたら?」
フィア 「兄さん、きっと喜ぶわ。本当にありがとう、カレフさん!」
カレフ 「いいんだ。(打ち明けられないけど、僕は本当はきみの兄なんだ。でも、複雑な家庭の事情のせいで、子供のころに生き別れになってしまった。今さら兄だなんて名乗れない。そのかわり、ノイエ卿がきみの面倒を見てくれている。ノイエ卿には感謝しないとな……)」

ノイエ 「おーい、噴水技師、ちょっと来てくれ! 噴水からここまで管を通して、こっちに小さな池を作ることはできないか? 例の男爵夫人邸みたいに、優雅な感じで蓮の花を浮かべてみたいんだ。いや、費用のことなら心配ない。金に糸目はつけないから、とにかく検討してみてくれ」

カレフ 「……やっぱり、彼に預けたのは失敗だったかも」
フィア 「えっ? カレフさん、やっぱりノイエ兄さんに何か預けものをしているの?」
カレフ [いや、なんでもないんだ。それより明日の舞踏会が楽しみだね(微笑)」
フィア 「明日? ……あっ、ほんとだ! そんな、明日だなんて……!」
カレフ 「何か困ったことでも?」
フィア 「だって、着て行くものがないんだもの。おとなりのスティーナさんもセラエさんも、ちょうど“ご当地食い倒れ巡礼ツアー”に行ってていないの。もしいたら、何か着られるような服を貸してもらえたかもしれないのに。わたし、穴のあいたような服しか持ってないわ」
カレフ 「ノイエ兄さんに、新しいドレスを買ってほしいとお願いしてみるべきだと思うよ。彼は意外にお小遣いを持っているようだからね」

ノイエ 「いや、ちょっと待てよ。いっそのこと、噴水をやめて全面的に池にしてみるというのもアリかもしれないな。月光が池に映って、たいそう美しい気がする。そうすると今度は、こっちに月見のテラスが必要だな。……よし、もう一度設計を練り直そう。……おーい、悪いが、いったん工事をストップしてくれ! 根本から考え直したいんだ!」

フィア 「うーん。そうね。でももしドレスを買ってもらえることになったとしても、今日注文して、明日完成するっていうのは無理だと思うの。やっぱりわたし、舞踏会には行けないわ」
カレフ 「そうだなあ……。招待状のことばかり考えていて、ドレスのことはぜんぜん考えていなかったよ。ごめんよ、気がつかなくて」
フィア 「うん、いいの。招待状を貰えただけで、嬉しかった! ちょっとだけ夢を見られたんだもの」
カレフ 「………」

──翌日の夕方。

フィア 「もうすぐ舞踏会が始まる時間だわ。お城にも灯りがついた」
怪しいフードの男 「もしもし、お嬢さん」
フィア 「はい? どなた?」
怪しいフードの男 「わたしは魔法使いだ」
フィア 「えっ?」
魔法使い 「きみはもしかすると、舞踏会の招待状を持っているのではないかな? そして、わたしの察するところ、着て行くドレスがなくて困っている」
フィア 「すごい! どうしてわかるの? おじいさん?」
魔法使い 「魔法使いだからだよ。おじいさんではない」
フィア 「そうなの? だって、舞踏会に連れていってくれる魔法使いはおじいさんって決まっているから」
魔法使い 「おばあさんのときもあるがな。……そんなことはどうでもよろしい。舞踏会に行く気があるか、ないか、それを聞いているのだ。さっさと答えろ」
フィア 「も、もちろん、行きたいけど」
魔法使い 「では、こちらへ来なさい。わたしの馬車に乗るんだ」
フィア 「で、でも、知らない人の馬車に乗っちゃいけないって、兄さんが」
魔法使い 「フン。いっぱしに躾けられているわけか。……仕方がない、名を名乗ろう。わたしは第五十回・舞踏会実行委員会の実行委員長、レヴィンというものだ。朝七時から夜十時まで城で勤務している役人であって、怪しいものではない」
フィア 「ふ、ふうん。そうなんだ」
魔法使い 「では、来るんだ。貧相な娘でも、まわりがびっくりするくらい美しく着飾らせてやろう。わたしの卓越した美的センスで」
フィア 「は、はい。(なんかよくわからないけど、ついていけばいいのね)」


城では華やかな舞踏会が始まったばかりだった。
お妃選びのための五十回目の舞踏会にうんざりしている国王は、なかなか自分の部屋から出てこようとしなかった。それよりも、知り合いの天文学者が送ってよこした、「十二回分のふろくを全部合わせると手作り望遠鏡が出来るセット」を組み立てているほうが楽しい気がしていた。

ヴィクター 「ふむ……。この屈折式鏡筒と経緯台を組み合わせ、そこに接眼レンズをはめ込むわけか。なかなかよくできている。倍率は百四十三倍……そんなにあるのか。すごいな。これなら来年分も購読してもいい」

レヴィン 「陛下! 陛下! 出てきてください。舞踏会の時間です!」

ヴィクター 「チッ。またあいつか。うるさいやつだ。居留守を使おう」
レヴィン 「いるのは分かってるんですよ! 借りた金は返す、人間として当たり前のことでしょうが! おいこら、出てこい! 出てこないなら、今すぐ耳を揃えて借金返済してもらおうか! ああ!?」
ヴィクター 「くっ。借金返済を盾にするとは、卑怯なやつだ!」
レヴィン 「出てこないなら扉に張り紙するぞ! いいのか!」
ヴィクター 「やかましいっ!!(バーン!)」

国王は怒声を上げて扉を開ける。レヴィンがのけぞった。したたかに鼻を打ったのだ。

ヴィクター 「行けばいいんだろうが、行けば! おまえが前に言ったように王国一の美人がいなかったときには、向こう三年減給だからな。覚えてろよ」
レヴィン 「はじまる前から捨て台詞を吐かないでください、陛下。美人の調達は間に合いませんでしたが、陛下が探していた娘は無事に発見しました」
ヴィクター 「本当にその娘か? 俺が顔がわからなかったのに、なぜおまえに見つけられる?」
レヴィン 「間違いありません。わたしの調べによれば、その娘は以前、山中の修道院に住んでいたのです。しかし最近は王都に来て、なんと……ノイエと暮らしていたのです」
ヴィクター 「すると、先日話題にのぼった『ノイエの愛人』とかいう娘が、俺の探していた娘なのか?」
レヴィン 「そういうことになりますな」
ヴィクター 「ふむ……。そんな偶然が? ……まあいい。会ってみればわかる。どっちにしろノイエの愛人の顔は見ておく必要があると思っていたところだ。あいつの趣味がどんなか知るために」
レヴィン 「ではこちらへ……」
ヴィクター 「なんでもいいけど、鼻血拭けよおまえ。顎まで垂れてるぞ」

フィア 「本当にこの格好でいいのかしら……。魔法使いさんはいなくなってしまったけど」

その頃、フィアは舞踏会の会場をひとりでさまよっていた。
招待客は三百名近いらしく、大広間はごった返している。壁際にはずらりと屋台が並び、りんご飴、たこ焼きなどを威勢のいい掛け声とともに焼いていた。

フィア 「この“ユカタ”っていう薄いドレス、なんだかスースーして、すぐ脱げちゃいそう。この紐がほどけたら絶対そうなるのよ。うっかり人にぶつかったりしないようにしなきゃ……きゃっ!」
通りすがりの騎士フィルデール 「あっ、しまった! つい、紐を引っ張ってしまった……。大丈夫ですか? お嬢さん?」
フィア 「だ、だ、大丈夫じゃ……い、いえっ、平気です! わたしに構わないで!」
フィアは今にも脱げそうな浴衣の前をかき寄せ、真っ赤な顔で走り去って行った。
通りすがりの騎士フィルデール 「なんという初々しい娘さんだろう。もっと丁寧に名前を聞いておけばよかった。そのあいだに、あの下着みたいな変わったドレスが全部脱げたかもしれないのにな」

フィア 「ご、ご飯を食べるどころじゃないわ! どこかで紐を結び直さないと……。あっ、そこのカーテンのかげで! ……って、いやぁぁぁぁ! どこかに紐を落としてきちゃった! どこぉ!?(涙目)」

その頃、自分の部屋から強引に連れ出された国王は、ふてくされて廊下を歩いていた。そして、ほとんど人けのない廊下のすみで、なにやらはいつくばっている娘の姿を目撃した。

ヴィクター 「おい、何をしてる? そんなところで」
フィア 「あっ……。す、すいません! ひ、紐を落としてしまって……」
ヴィクター 「紐?」
フィア 「服の紐です。えっと……コ、コルセットみたいな」
ヴィクター 「どうやったらそんなものを落とせるのだ?」
フィア 「あ、い、いえ。一人で探せますから!」
ヴィクター 「そんなはしたない格好で何を言ってるんだ。人に見られたら恥をかくぞ。その前にさっさと見つけたほうがいい」
フィア 「は、はい」

ヴィクター 「ここに何か布のようなものが落ちているが」
フィア 「あっ、そ、それです!」
ヴィクター 「……巻いてやろうか?」
フィア 「け、けっこうです! あっちを向いていてください!」
ヴィクター 「ほとんど見えてるけどな」
フィア 「ぎゃー!!」
ヴィクター 「なんでそんな服を着てきたんだ? 脱がせてくださいみたいな。(貧相なくせに)」
フィア 「し、招待状はあったけど、ドレスがなくて……。そしたら、魔法使いのお兄さんが、わたしにこの服をくれたんです。でも、着てみたら、なんだか思ってたのと違ってて……。ぶ、舞踏会なんか来なきゃよかった!」
ヴィクター 「……その声……?」

国王は思いだしかけていた。半年前の、暗い山中での出来事を。
その山中で、彼は叔父のイノシシ狩りにつきあっていた。叔父はイノシシをうまく捕まえられないのに癇癪をおこし、山の中を落とし穴だらけにしていた。その穴に、一人で獲物を探して歩いていた彼はうっかりはまってしまったのだ。

彼は落とし穴に落ちたショックでしばらく気絶していた。穴は想像以上に深く、落ちた拍子に頭をぶつけて脳震盪を起こしていたのだ。
しかし、そんな彼もしばらくして意識を取り戻した。
その穴に、もうひとり別の人間がはまってしまい、おもいきり踏まれたからだった。

娘 『きゃああああああ!(ズボッ……ガツン!)』
国王 『誰だ、今俺の頭を木靴で思いきり踏んだやつは!』
娘 『わ、わたしです。……ていうか、どうしてこんなところに落とし穴が!?』
国王 『なんでもいいから、早く上がってくれ。潰れそうだ』
娘 『わ、わたし、そんなに重くありません。あなたを潰すほど』
国王 『そういう問題じゃない!』
娘 『そ、そうですね。あの、すみませんが、わたしを上に押し上げてくれませんか?』
国王 『くそっ……。今日は踏んだり蹴ったりだ!』
娘 『踏まれたり、蹴られたりですよね?』
国王 『だからそう言ってる!!(怒)』

ヴィクター 「おまえはまさか、あのときの……。落とし穴の娘?」
フィア 「えっ? そう言うあなたは、あのときの……落とし穴にはまっていた人?」
ヴィクター 「間違いない、俺が探していたのはおまえだ!」
フィア 「ええっ? ど、どうしてわたしを探していたんですか?」
ヴィクター 「あのあと、おまえを家に送り届けてやったろう。暗い道を背負って」
フィア 「え、ええ……。たしかにそうでした。わたし、足を挫いていたから」
ヴィクター 「そのくせに木になっている何かの実を取ろうとして、枝に引っかかって俺をこけさせてくれたな」
フィア 「だ、だって、ふだんは手の届かないところに届きそうだったから!」
ヴィクター 「まあいい。とにかくそのとき、おまえの家に忘れ物をしたんだ」
フィア 「えっ、忘れ物?」
ヴィクター 「剣だ。うっかり剣を置いてきてしまったんだ。貧乏くさいおまえの母親にまずい茶を出されたとき、縁側にちょっと置いたらそのまま忘れて帰ってしまった」
フィア 「それなら、わたしが王都の質屋に持っていきました。(お母さんじゃなくて、修道院の院長なんだけど……。)『高く売れるかもしれない』っていわれたから」
ヴィクター 「質屋だと!」
フィア 「ええ……。でも、骨董品を探しに来ている人がいて、その人がすぐに買っていっちゃいましたよ。『安い安い』って喜んで。立派なヒゲの、ちょっと痩せた感じの中年騎士の方でした」
ヴィクター 「あいつか! 王家の紋章入りの剣を安値で買っておきながら黙っているとは……。とにかく、わかった。しかしおまえはなぜ家に戻っていないんだ?」
フィア 「王都で迷子になって、帰れなくなっちゃったんです。そうしたら偶然にも生き別れ兄さんと再会して、それからずっと兄さんと暮らしてます」
ヴィクター 「ふうん……」
フィア 「あの……。あ、ありがとうございました。一緒に探してくださって」
ヴィクター 「つかぬことをきくが、ダンスは好きか?」
フィア 「えっ? ……わたしは、ダンスよりあつあつのパイが好きですけど」
ヴィクター 「なら、厨房に行ってみないか。こう見えて、俺はその……厨房に顔がきく。なんでも好きなものを食わしてやるぞ」
フィア 「もしかして料理人の方でした? 一緒に行きます! あっ……」
ヴィクター 「なんだ?」
フィア 「でも、どうしてわたしを誘ってくれるんですか?」
ヴィクター 「い、いや。俺の頭を木靴で踏んだ女のことが、なぜかずっと忘れられなくてな。それで密かに探していたんだ。木靴で踏まれるのは思った以上に刺激的な体験だった」
フィア 「ふ、ふうん。変わった人……」


……こうして、国王を木靴で踏んだ娘は、無事に国王の妃となれたのでした。
壊れやすいガラスの靴より、これからは頑丈な木靴だ!
みんな、木靴を買おう!

木靴購入のお問い合わせ 王都○○通り△△商店まで!
                                【完☆】






*

──それを読み終えたレヴィンは、しばらく無表情だった。
彼は執務の合間につまらない小話を書いているのではないかという疑惑をかけられ、今まさに、そのつまらない小話を読まされているところだった。本当に自分の書いたものかどうか確かめるために。
その向かいには少し気分を害したふうのヴィクターが立っていた。
彼はこの小話を途中まで読んだとき、これは側近がふざけて書いたものに違いないと思いこんでいた。しかし、よくよく考えてみれば、やはりこのつたない字は側近のものと思えない。側近はもっと美しい文字を書くのだ。それこそ、なみの文字装飾官など必要ないほど。
「……最後の『木靴購入のお問い合わせ』ってのはなんなんだ? え?」
「知りませんよ」
レヴィンは不機嫌に言った。
「わたしがこんなものを書くとお思いですか? 心外きわまりない!」
「じゃあ誰が書いたというんだ! このクソ小話はこの執務室の床に落ちていたんだぞ!」
「あなたがご自分で書かれたんじゃないんですか? 字が汚いのは前に右手で書いたせいで。特に最後、あの小娘と『めでたし、めでたし』になるあたり、あなたの願望が投影されているように思えてなりませんよ」
レヴィンは変な疑いをかけられた怒りで少々冷たくなっていた。
そこに、おずおずといったふうに執務室の扉が叩かれる。
ヴィクターはむっとした顔で側近を睨みつけたあと、大またで扉を開けにいった。すると、入室しようとしてもじもじしている若者がいる。レヴィンが雇っている執務官長補佐(俗称・秘書官)のひとり、ジョシュア=ダリューだった。
「あ、あの……。ちょっと、部屋に忘れ物をしたようなので……」
ジョシュアは愛想よく笑おうとした。ヴィクターは眉を上げた。
「ほう……。忘れ物か」
「お、お時間は取らせませんので! ち、ちょっと、探させてください。見つけたらすぐに出て行きますから!」
「……その忘れ物というのは、もしかすると木靴じゃないのかな?」
ヴィクターは腕組みをしてジョシュアを見た。ジョシュアは顔面蒼白になった。
「ひっ……。み、見たんですか!? 僕の小説!?」
「床に落ちてた」
「おおお、お許しを! ちょっとした気分転換のつもりだったんです! 仕事で徹夜が続いて……頭がおかしくなっていて……。そ、それに、知り合いから、木靴が売れるようないい宣伝がないものかと急に頼まれたりして……あああああ」
ジョシュアはその場で気絶しそうになった。ヴィクターはそれを強引に引っ張り起こした。
「『くだらない小話など書いている暇があれば、さっさと俺の仕事を片付けよ』」
ヴィクターは小説の台詞を引用して言った。
ジョシュアは泡を吹く寸前の顔になっていた。
「嘘だよ。まあ、なかなか楽しませてもらった……。ほら、持っていけ」
ヴィクターは後ろを指差し、レヴィンが手にしている羊皮紙を示した。
ジョシュアは真っ赤になったり真っ青になったりしながら、レヴィンに近づいた。そして彼の手から羊皮紙をもぎとろうとした。しかしレヴィンはすぐにはそれを離さなかった。
「ジョシュア=ダリュー。分かっていると思うが、これはさまざまな意味で減給ものだ」
レヴィンは冷ややかに宣告した。ジョシュアは観念したように頷いた。
「わ、わかってます……。お二人のお目に触れた以上は、ただですむとは思っていません……」
「特に、わたしがあの娘を陛下に引き合わせようとするくだり。あんなものは現実にはありえない。……わかるか? もしわたしが魔法使いなら、ありとあらゆる魔法を使ってあの娘を陛下から遠ざけただろう! 地の果てまでも!」
レヴィンは青筋を浮かべていた。ジョシュアは怯えて頷くことしかできない。
「は、はあ……。ご、ごもっともです」
「書き直せ。今すぐ。そして、この話を悲しい話にしろ。この小娘は重い病か何かで悲劇的に死なせてかまわん」
「え……。でも、僕は悲劇的な話はあんまり得意じゃなくて……」
「勤務時間にこんなものを書いていた立場で、上司に口答えするつもりか!」
「ひっ……」
「それよりジョシュア」
ヴィクターが怪しむような顔で話しかける。
「は、はいっ!」
「この小話にはフィアの兄のことまで書かれているが、どこで聞いたんだ?」
「あっ、それはですね。先日、王妃さまとお茶会をする機会がありまして、そのときに……」
答えようとしたジョシュアは、執務室に衛兵が飛び込んでくるのを見て口をとじた。
「陛下! 奥方さまが、花壇で転んでおケガをなさいました!」
「……なんだって?」
ヴィクターは顔をしかめた。そして彼はすぐに歩きだした。外へと。
「どの程度の怪我だ?」
「手首を捻挫されたようで」
「その程度か。まったく……だから、あんなところに花壇なんか作るのはやめろと言ったんだ! 人の言うことをきかずに意地を張るからこうなる」
ヴィクターが執務室から出て行ったあと、レヴィンはまだ羊皮紙を手にしてジョシュアを眺めていた。
「クビにされたくなければ、王妃がとんでもない失敗をしでかして離縁される話を三つほど書け。出来がよければ全部買い取ってやる」
「か、書いてどうするんですか? そんなの」
「王都の新しい劇場で上演するんだ。へぼな王妃が離縁される話をな!」
「お言葉ですけど、執務官長。今さら無駄だと思いますよ……」



                                   おしまい。




「1」2010年1月
「2」2011年7月
お断り・記事を連続させるために「2」の日付を古くしています。

2010 / 01 / 30. Posted in おまけ小話1 [編集]

レヴィンとフィア、病室にて

「跡継ぎ騒動」の2と3のあいだくらいの短いシーンです。
キリが悪かったのではずしましたが、こちらに載せておきます。
少ないとは思いますが(・・・)、レヴィン好きの方に捧げます。

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2014 / 07 / 13. Posted in おまけ小話1 [編集]
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