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レヴィンとフィア、病室にて

「跡継ぎ騒動」の2と3のあいだくらいの短いシーンです。
キリが悪かったのではずしましたが、こちらに載せておきます。
少ないとは思いますが(・・・)、レヴィン好きの方に捧げます。
「──やっぱり、あなたがいないとなんだか調子が狂うわ」
フィアはベッドの傍らの椅子に腰掛けて言った。
ベッドの上にいるのはレヴィンだ。熱心な治療の成果が出たのか、だいぶ顔色もよくなっている。ただ、いまだに起き上がるのには苦労するらしく、執務室に戻れるほど回復してはいない。
「私からすれば、おまえの顔を見なくてすむから気分がいいが?」
いつもの憎まれ口を叩かれても、フィアはにこっとするばかりだ。
「そうそう、その調子よ」
「褒めるな……」
レヴィンは苦虫を噛んだような顔になった。
「……ごめんなさい」
フィアはそんなレヴィンの顔を見つめ、呟くように言った。
「あなたがこうなったのは、わたしのせいだわ。本当にごめんなさい……」
「そうだ、疫病神のおまえのせいだ。この国に起こる災厄の大半はおまえの責任だ」
レヴィンは天井を見上げて目を閉じた。
フィアは少しばかりうなだれた。
「救貧院の院長があなたを刺すなんて、考えもしなかったの……」
「考えてないのはいつものことだろう」
「……そうだけど。でも、今回のことはこたえたわ」
「………」
レヴィンは薄目をあけてフィアを見た。
フィアはうつむいている。本当に悔やんでいるというようだ。
どうせこんなことになると思っていた、とレヴィンは内心思った。
だからわざわざ、自分の名前で手紙を出したのだ。
しかし、そのことをフィアに言いたくはなかった。
レヴィンは、いいことをしたとき、それを人に言いたくないというひねくれた性分だった。
「ほかにもいろいろ相談したいことがあるの。でも……今は、怪我を治すことに専念して。あなたが執務室に戻ってきたら、そのときに話を聞いてもらうから」
「ふん。言われなくても治療に専念する。わき腹から血を流したくないからな」
また憎まれ口を叩きながらも、レヴィンは内心、フィアが相談したがっていることというのは何なのかが気になった。だが、それを訊ねるといかにも親切な人のように思われてしまうことが屈辱にも思えた。
「どうせ下らん悩みだろう」
「……そうかもしれない」
視界の隅でフィアが小さく微笑んだ。レヴィンはすばやく薄目を閉じた。
「ねえ、レヴィンさん。人の心って、本当に分からないものよね……」
「………」
レヴィンは寝ているようなふりで黙り込んだ。
人の心、などと言われても返答に困る。自分だってそんなものはたいして分からないのだ。分からないから、救貧院の院長に目通りを許してしまった。文句を言われこそすれ、刺されるとまでは思っていなかった。
そういうことには、人はもっと躊躇するはずだとどこかで思っていたのだ。
「わたし、前は分かるって思ってたの。でも今は、分からなくなった……」
フィアの言葉は物思いに沈んでいるように聞こえた。
「みんないろんな思いを持って生きてるから、それを分かろうとするほうが無理だったのかもしれないけど……。でも、話をすれば分かると思ってたし、分かりたかった。それを諦めなきゃいけないのは残念に思うわ」
「諦めるのか?」
「……だって」
フィアは言いよどんだ。レヴィンがそんな問いかけをするとは思わなかったからだ。
レヴィンも、自分が何を言っているのかはっきり理解しているわけではなかった。ただ、「諦める」という言葉の響きはフィアには似合わないような気がした。
浅はかでも、愚かしくとも、自分を曲げずに生きてきた娘ではないか。
「まあ、おまえが何を考えようとも、私には関係ないことだが」
「………」
フィアは黙ったまま微笑んだ。それから立ち上がった。
「そろそろ行くわ。無理しないで、体を大事にしてね、レヴィンさん」
「言われなくても、私は自分の体を一番大事にしてきた。馬鹿に刺されるまではな!」
レヴィンはフィアを見あげて少しばかり顔をしかめた。
「でも、あなたは何度もわたしを庇ってくれたわ」
「そんなものは記憶にない。思い上がるな」
「あなたが忘れても、わたしは覚えてる。あなたは本当は優しいってこと」
フィアはそう言って部屋を出て行った。
レヴィンはしかめっつらになりながら、かたわらに放っていた書類をまた手にした。
だが、大して集中できず、すぐに放り投げた。
そして天井を仰ぎ見て、じわりと苦い吐息をついた。
2014 / 07 / 13. Posted in おまけ小話1 [編集]
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